研究概要 |
【目的】CNPは脳に特異的に存在するナトリウム利尿ペプチドであるが、このペプチドに対するリセプターは広くアストロサイトに存在することが知られている。アストロサイトはフットプロセスを介して血管内皮細胞と、また、他のプロセスを介して神経細胞や脳室上衣細胞と接する事により、中枢神経系の水分電解質調節に重要な役割を演じていることも報告されている。本年度は先天性水頭症ラットと水頭症患者における髄液中のCNP濃度を測定することにより、アストロサイトを中心に展開される中枢神経系の水分電解質の調節にCNPが如何なる役割を有するかを検討した。【方法】動物実験には4週齢の先天性水頭症ラットHTXを用い、脳室の拡大の程度をcerebro-ventricular ratioにより計測した。その内訳は脳室拡大を認めない群53匹、軽度脳室拡大を認める群4匹、著明な脳室拡大を認める群26匹であった。臨床例は、対照群10例(年齢:1ケ月より71歳、平均年齢:46歳、男女比:4:6)、水頭症患者群15例(年齢:1ケ月より81歳、平均年齢:34歳、男女比:7:8)、治療後水頭症患者群10例(年齢:1ケ月より53歳、平均年齢:17歳、男女比:4:6)である。これらの症例の髄液中のCNP濃度をradioimmunoassay法にて測定した。【結果】CNP濃度は先天性水頭症ラットの脳室拡大を認めない群:3.33±0.44pg/ml,軽度脳室拡大を認める群:9.15±2.09pg/ml,著明な脳室拡大を認める群:17.04±4.25pg/ml,と水頭症の程度に応じて増加していた。臨床例では、対照群:3.72±1.65pg/ml,水頭症患者群:15.84±8.98pg/ml,治療後水頭症患者群:3.37±1.55pg/mlであり、臨床例においても髄液の循環障害のある例では高値を示した。さらに、治療群では対照群と同程度の濃度を示した。【結論】髄液循環のMajorpathwayが障害された水頭症では、代償性に経脳室壁髄液吸収が増加しており、CNPは中枢神経系の水分電解質の調節に重要な役割を演じている事が推察される。
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