研究概要 |
ナトリウム利尿ペプチドはguanylyl cyclase family of receptorに作用し,second messengerとしてcGMPを介して,さまざまなion transport proteinsの働きに関与する事が明らかになっている。本研究ではアストロサイトを中心に展開される中枢神経系の水分電解質の調節にCタイプナトリウム利尿ペプチド(CNP)が如何なる役割を有するかを検討した。平成8年度は(1) 培養細胞を用いたCNPに対する細胞内cGMPの定量:アストロサイトは添加したCNP濃度に比例して細胞内cGMP濃度の増加を認めた。一方、神経細胞の細胞内cGMP濃度はCNPの影響を全く受けなかった。(2) CNP添加後の培養アストロサイトの細胞内カルシウムの測定:CNP添加後2峯性の[Ca^<2+>]iの上昇を認めた。平成9年度は(3) 水頭症における髄液中CNP濃度の測定:水頭症では対照に比べ,髄液中CNP濃度の上昇を認めた。平成10年度は(4) CNPによる細胞体積変化の測定:CNP receptor発現細胞では,CNP添加後30分にて,添加前の体積の約60%まで減少した。更に60分後には約90%にまで回復した。(5) 頭蓋内圧測定:先天性水頭症ラットHTXの頭蓋内圧は,CNP投与後に急速に下降した。CNPは脳に特異的に存在するナトリウム利尿ペプチドであるが,このペプチドに対するリセプターは広くアストロサイトに存在することが明らかになった。アストロサイトはフットプロセスを介して血管内皮細胞と、また、他のプロセスを介して神経細胞や脳室上衣細胞と接する事により、中枢神経系の水分電解質調節に重要な役割を演じていることが報告されており,今回の我々の研究から,CNPは中枢神経系の水分電解質調節に重要なホルモンである事が明らかになった。
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