研究概要 |
虚血性脳血管障害による脳梗塞さらには血管性痴呆は既に大きな問題になっており、その対応策の開発を目的として研究を行った。私達が開発した、侵襲が少なく、効果的に脳硬膜から虚血脳へ豊富な新生血管をもたらす血行再建術(RDP : Reversed durapexia) を臨床例に行い、血管新生を左右する関係因子の検討を行った。さらに動物実験により血管新生関係因子、新生血管の発生の仕方の解明を目指して研究を行ってきた。臨床例としては動脈硬化性と思われる脳梗塞8症とMoyamoya病の8症例に行い経時的に観察した。動物実験ではラットの中大脳動脈閉塞モデルを用い、経時的に脳組織における増殖長因子の動きを観察した。また新生血管の発生の仕方の観察には白色家兎の中大脳動脈を閉塞しその灌流領域にRDPモデルを作成、頚動脈からバリウムを注入し硬膜および脳血管の観察を行った。本年度の研究より以下の結論を得た。1)モヤモヤ病のみではなく動脈硬化性変化による脳梗塞例においてもRDPにより豊富な血管新生が得られ、症状の改善、新たな虚血発作の予防に有用であることを明かにし得た。2)RDPの手術摘要としては、60才代までで、Diamox負荷で血管の拡張能が低下しており、脳の萎縮が著明ではないものを条件に含ませるべきと思われる。3)ラットの一側中大脳動脈閉塞モデルでは梗塞巣辺縁部では増殖因子VEGF,bFGF,TGFの増加がみとめられた。虚血脳組織での増殖因子の増加が血管新生の誘発に関係している可能性が強く考えられた。4)硬膜血管と脳血管との関係を形態的に見るのは大変困難であったが、白色家兎を用いたバリウム注入透明標本標本でそれが可能になった。5)臨床例のRDPの摘要をより明かにし、血管新生の機序を明かにすることによりさらに有効な脳虚血性疾患の治療法確立しうるものと思われる。 これらの成果をInternal Symposium on Moyamoya Disease (at Fukuoka)、昭和大学共同研究成果発表会などで発表し、英文雑誌Surgical Neurologyに投稿済である。
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