昨年度のin vitroの実験を継続して本年も行った。すなわち、グリオーマに特異的に結合するASHG4モノクローナル抗体にリポソームを結合させ、さらにそのリポソームにRB遺伝子とp16遺伝子を含む2種類の発現プラズミドをそれぞれ封入して作製したリポソーム-モノクローナル抗体-DNA複合体を用いて、すでに見つけたRBおよびp16癌抑制遺伝子を欠失するU-373細胞にこのモノクローナル抗体結合リポソームに封入されたRB発現プラズミドとp16発現プラズミドを同時にtransfectionし、transfectantをG418でselectionして、トリパンブルー染色によるcell count法によりその増殖能を対照群と比較した。その結果、対照群に比較して2種の癌抑制遺伝子を用いた群での腫瘍増殖能の抑制が明らかに認められた。 続いて、本年度はin vivoの実験にも着手した。すなわち、RB遺伝子およびp16遺伝子の欠失が認められた樹立ヒト悪性グリオーマ細胞、そして正常のRBおよびp16遺伝子の発現のみられる樹立ヒト悪性グリオーマ細胞のそれぞれ5x10^6個をヌードマウス上背部皮下に移植したヌードマウス皮下移植脳腫瘍モデルを作製し、移植7日目に尾静脈からモノクローナル抗体結合リポソームに封入されたRB遺伝子発現プラズミドとp16遺伝子発現プラズミドを注入した。その後、経時的にマウスから腫瘍を取り出し固定後、薄切片を切り出してウサギの抗RB抗体とp16抗体を使用して、Avidin-Viotin法を用いてimmuno-peroxidase assayを行い、免疫組織学的に腫瘍組織のRB蛋白とp16蛋白の発現を確認した。しかし、結果はまだ十分ではなく、現在も実験を続行中である。また、脳内移植モデルについても同様の実験を施行予定にしていたが、本年度は実施できずに来年度実施予定となった。
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