研究概要 |
転移性脊髄腫瘍など硬膜外からの慢性圧迫による脊髄障害の病態を検討するため,緩徐に膨張する子宮頚管拡張剤を圧迫材に用いた脊髄持続圧迫モデルを作成し,脊髄白質の病変を組織学的に検討した. 【方法】ラットのTh9椎弓下硬膜上に圧迫材(Dilapan)を留置し,1,2,3,7,14,30,90日間持続圧迫し,圧迫部脊髄の光顕および電顕による組織学的検討を行った.また圧迫解除の影響を観察するため,7日後に圧迫剤を除去し,その後30日目の変化を,持続圧迫したものと比較検討した. 【結果】1)圧迫後1〜3日目の急性期では,後索と隣接する灰白質に限局した出血性壊死を認めた前角や側索・前索の壊死はなかった.2)白質では,海綿状変化が2日目から出現し,以後90日まで持続した.この変化は周辺部では軽微で,深部に強く圧迫部位とは関係なく脊髄全体に観察された.3)電顕所見:側索では,2日目以降,軸索は浮腫性膨化し,ミエリン解離も伴っていた.軸索が脱落しミエリンが小魂状に変性したアクソンボールも多数観察された.この軸索変性の所見は程度は軽減するが圧迫後90日目まで継続して観察された.髄鞘の韮薄化は目立たなかった.4)圧迫解除例では,非解除群と比べて側索における軸索変性の程度は明かに軽減していた. 【結論】本モデルは,急性圧迫モデルとは異なり,脊髄の破壊性壊死はほとんどなく,慢性圧迫による脊髄障害の検討モデルとして妥当であると考えられた.脊髄持続圧迫による白質病変の主体は脱髄性変化とともに,圧迫中持続する軸索変性も重要と考えられた.
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