1. 金属製spinal instrumentationに関する生体力学・臨床研究:従来の強固な金属により構成されるspinal instrumentationの持つ利点とその弊害につき生体力学的側面より明らかにした。不安定化脊柱や変形脊柱では、spinal instrumentationの使用が脊柱の安定性を獲得する上で必須であることが明らかになった。しかし、固定範囲延長にともない、固定隣接椎間に著しい応力集中が生じることが明らかになった。 2. PLLA製(ポリ-L-乳酸骨接合材)systemによる脊椎固定術の基礎的研究:成羊12頭にPLLA製systemによる固定術を実施し、脊椎の固定材料としての臨床応用への可能性につき検討した。固定24椎間中1椎間にてrodの折損を認めた。術後、4・6ヶ月経過時、PLLA rodの一部に凹凸を認めたが、術前と変わらない形態と固定力を維持しており、PLLAの生体に吸収される特性が発揮されず、強固な金属製implantと同等なsystemとしてしか機能しないことが明らかとなった。力学的強度を脊椎の固定性を維持可能なまで高めると、PLLAの溶解能を減じることになり、高い力学的強度の維持と速やかな溶解特性を有するPLLA製spinal instrumentationの開発には、さらなる研究が必要と考えられる。 3. PLLA製screwの脊椎外科領域への臨床応用に関する研究:頚椎、特に上位頚椎への後方固定術に、移植骨の母床への固定目的にPLLA製screwを応用した。吸収性PLLA screwは、移植骨を母床へと強固に固定し、母床と移植骨の接触面を最大限に拡大し、従来のonlay graftに比べ骨癒合率の向上に寄与することが判明した。
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