研究概要 |
(1)化学メディエーターによる知覚神経節細胞内電位の解析 成犬より採取した知覚神経節付き腰部後根を人工脳脊髄液中に維持してin vitro標本とした。ガラス微小電極を神経節細胞内に刺入し、膜コンダクタンスと興奮伝導速度から細胞タイプを同定した。これまでの研究で関与が明かとなったプロスタグランジンE2に反応するのは比較的小細胞群であった。 (2)慢性障害神経根による異所性発火発現部位の解析 成犬の腰部神経根に予めシリコンによる慢性圧迫を6週間加え、それを採取して(1)と同様のin vitro標本とした。神経根の中枢側を細分し,多チャンネル双極電極にて神経根活動を導出記録した。圧トランスジューサ付きの定速圧迫装置を用いて神経根健常部、慢性圧迫部、神経節の発火発現閾値を計測することが可能であった。この慢性障害神経根にいては反応閾値の低下が認められた。 (3)ヒトにおける術中microneurogramの解析 腰椎椎間板ヘルニアおよび狭窄症による神経根障害の手術的治療患者を対象とし,術中においてmicroneurogram電極を用いて神経根の感覚神経活動導出を試みた。そして(2)で用いたと同様の圧モニタ付圧迫子にて知覚神経根から神経根中枢部に沿って圧迫や牽引を加え,異所性発火発現の様式を観察した。発火の発現部位からすると、知覚神経節が重要なfocusであることが判明した。このようにして得られた知見は、神経根障害を有する患者に見られる坐骨神経痛などの異常感覚と深く関連するものと推定された。 さらに、in vitro条件下では副腎皮質ホルモンによる発火抑制が認められ、臨床的に見られる意見とよく一致していた。
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