研究課題/領域番号 |
08671632
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
岩原 敏人 旭川医科大学, 医学部, 助手 (80133817)
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研究分担者 |
佐藤 雅規 旭川医科大学, 医学部, 助手 (40281886)
熱田 裕司 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90167924)
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キーワード | 脊髄損傷 / 二次変性 / 脊髄潅流療法 / 脊髄誘発電位 / 人工脳脊髄液 |
研究概要 |
ラット急性脊髄損傷モデル、脊髄損傷後の2次変性に対する脊髄潅流療法の有効性を、脊髄誘発電位(SCEP)を用いて評価した。Wister系成熟雄ラット(体重385-410g)10匹に気管切開を行い、halothane(1-2%)吸入麻酔後、suxamethonium chrolide(5-8mg/kg、im)にて非動化した。第8-10胸椎を椎弓切除し、その頭尾側棘突起にてstereotaxic frameに固定した。術野頭尾側に硬膜外カテーテル電極を挿入し下行性脊髄誘発電位を記録した。脊髄損傷は第9胸髄を、micromanipulatorに取り付けた直径3mmの圧迫子により0.01mm/secの低速度で圧迫して作成した。その際SCEPを指標とし、第1電位振幅が受傷前の10%以下になった時点で圧迫を解除した。10匹のラットを2群に分け、5匹を脊髄潅流群(PERFUSION)、残りの5匹を無治療の対照群(CONTROL)とした。脊髄潅流群は圧迫解除直後に損傷部硬膜を切開し、37℃に加温し95%酸素で飽和させた人工脊髄液(aCSF)で損傷部脊髄を4時間潅流した。潅流速度は1ml/min程度とした。両群とも受傷前より受傷後4時間までSCEPを記録した。対照群では脊髄損傷後やや回復した振幅が漸減し、4時間後にはほぼ消失した。脊髄潅流群では損傷後に回復したSCEP振幅は減少せず4時間後まで漸増傾向がみられた。両群全例の平均SCEP振幅を比較すると、受傷後4時間で、脊髄潅流群はSCEP振幅が平均43.6%に改善したのに対し、対照群では振幅が平均0.2%でほとんど波形を認めず、統計学的有意差を認めた(p<0.01)。今回SCEP振幅を指標に作成したモデルは受傷直後は波形の回復を認めるが、その後無治療の場合4時間で波形が消失する再現性を認めた。この変化は脊髄虚血、微小出血、炎症反応など脊髄の2次変性を表すものと考えられた。今回の結果から局所脊髄潅流は損傷脊髄の機能回復に有効であったが、この効果は脊髄環境の改善とchemical mediatorなどの洗い出しによるものと考えられた。
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