(1)人工間接再置換術施行時に得られた骨融解組織の一部を採取しその病理学的特徴について検討した。HE染色による組織全体像としてはfibrous tissueを主体とした部分、単核細胞、多核細胞などの炎症性細胞を中心とした部分、滑膜様細胞を主体とした部分に大別された。滑膜様細胞はインプラントに接して存在し、炎症性細胞は骨融解を起こした組織の周辺にみられた。これらの細胞を機能分類するために、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)式色を試みたところ、多くの多核細胞はTRAP陽性に染色されたが、その染色性は一様ではなく非常に強いものから淡い染色性のものまで多種多様であった。骨巨細胞腫と同程度に強陽性に染色された細胞は、骨の近くに存在しており破骨細胞あるいは前破骨細胞の様な骨吸収能を持つような細胞であることが示された。 (2)工業的にしようされている高分子ポリエチレンの粒体の中で、酸化された粒体と非酸化の粒体を入手し、In vitroの実験系に用いるためにその粒体の大きさ(粒子分布計)、表面性状(走査型電子顕微鏡)、酸化度について検討した。その結果2種類の粒体は酸化度以外はぼ同じであることが判明した。 (3)酸化および非酸化ポリエチレンに対する生体反応を検討するために、In vitroマクロファージ培養系を用いた実験系に応用した。その結果、酸化ポリエチレンは末梢血マクロファージに貧食されやすく、貧食率においても二つのポリエチレンは有意な差があった。またその後引き続いて起こる骨吸収性サイトカインの産性にも有為な差がみられた。今後の展開として重要なことは、"再現性の高い動物実験モデル"の作成であると考えられる。動物モデルにより、骨融解という現象の時間的な経緯と個々の細胞の機能分担を詳細に検討することができ、最終的には予防策も見いだすことが可能となる。
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