初年度は、ウイスターラットを用いて尾椎椎間板の髄核を同一ラット腹部皮下に移植する脱出型ヘルニアモデルを作成し、ヘルニア周囲に形成される炎症巣に発現しているサイトカインを同定した。同じモデルを用い、先の実験で同定された走化性サイトカインをラット移植髄核に皮下注入することにより、サイトカイン未注入群と形態学的変化や組織学的変化を比較し有効性を検討した。 結果1:脱出髄核周辺に認められた炎症巣は、新生血管と炎症性細胞からなっていたが、そのほとんどの細胞はmacrophageであった。走化性サイトカインとしては、MCP-1とMIP-1αが macrophage、fibroblast、endothelial cellで発現していた。MCP-1陽性細菌の比率は、移植後1〜2週で一番高かった。 結果2:サイトカイン注入群ではMCP-1を用い、移植後5日間連続投与群と、移植同日だけ投与した群を作成した。コントロールとしてはPBSだけを同量投与した。engineer′s caliperを用いた体外計測で見ると、コントロールでは移植髄核は漸次縮小していき、4週変化が無くなった。移植同日にだけMCP-1を投与した群では、1週目・2週目の計測ではコントロールより縮小は著しかったが、統計学的有意差はなかった。5日間投与群では、1週目・2週目以降は優位に縮小し、、以後は大きさの変化は少なかった。 以上の結果から、走化性サイトカインがヘルニア周囲に形成される炎症巣形成に関与していることは間違いなく、連続注入でヘルニア縮小を促進することが明確となった。次年度は、RT-PCR法を用い浸潤細胞内でのm-RNAレベルのMCP-1発現を検討し、competitive PCR法で経時的な発現量を測定する予定である。
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