1.馬尾集合癒着について術後24時間の時点で対照群と2つの予防処置群の比較を行うと、インドメタシン(IND)投与群、メチルプレドニゾロン(MP)投与群ともに馬尾接着に対する抑制効果が明らかであった。術後3週の結果でも同様に両群で有意な抑制が認められた。術後6週においては馬尾癒着の程度は対照群と有意差はないものの、MP投与群では軽度となる傾向があった。馬尾癒着によって起こる神経変性所見は術後24時間の1例を除き全てが術後3週および6週に認められた。各群の神経変性の発生頻度を見ると、対照群では15匹中5匹33%であるのに対し、IND投与群では2匹13%、MP投与群では全く認められず、コントロールに比べ神経変性の抑制が明らかであった。馬尾血管透過性の変化について検討すると、術後24時間において2つの予防処置群共に対照群と比べEBA漏出の抑制が明らかであった。その他の時間での有意差は、認められなかった。以上のように、抗炎症薬はラット椎弓切除術後24時間の馬尾の血管透過性亢進と馬尾接着を明らかに抑制し、引き続き起こる馬尾癒着と神経変性を軽減させた。本研究の結果から腰椎後方手術という外科的創傷にまつわる局所炎症過程に対しての術後早期の抗炎症薬の投与は馬尾癒着および癒着性くも膜炎初期病態を抑制する手段として成立する可能性があると判断される。 2.線溶系増強物質投与群、線溶系抑制物質投与群の両群でU-globulin timeの測定値にばらつきが見られた。その原因として固体差や薬剤の投与方法に問第があると考えられた。組織学的な検討では、対照および2つの処置群の間に馬尾癒着の程度に有意差は見られなかったが、線溶系抑制物質投与群では高度の馬尾癒着を来たすものがあり今後、個体数を増やして検討する予定である。また上記の問題点につき現在さらに検討を加えている。
|