研究課題/領域番号 |
08671653
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
平田 仁 三重大学, 医学部・附属病院, 講師 (80173243)
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研究分担者 |
樋廻 博重 三重大学, 医療技術短期大学部, 教授 (60024642)
浦和 真佐夫 三重大学, 医学部, 助手 (60273356)
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キーワード | 末梢神経 / シュワン細胞 / 組織延長 / ポリアミン / BDNF / Trk B / 細胞培養 |
研究概要 |
Schwann細胞は末梢神経系のglia細胞であり、通常は軸索周囲に存在し、有随線維においては随鞘を形成している。Schwann細胞は通常分裂、増殖を行わず、軸索に対し種々の液性因子を介して様々な影響を及ぼしているが、神経損傷に際しては急速に増殖し、軸索再生の誘導、神経細胞の生存維持を担う。このSchwann細胞の特殊な機能により中枢ではほとんど見られない神経再生が末梢神経系では活発に見られる。近年Schwann細胞を移植することにより中枢神経系でも軸索再生が生じうる事が明らかにされた。我々は神経損傷時のSchwann細胞の増殖がシリコンチャンバーモデル、神経延長術により著しく亢進される事を見いだし、その増殖活性の亢進機序を調べ、神経再生により有用なphenotypeのSchwann細胞を短期間に大量に自家組織より得る事を目的に研究を続けてきた。現在までに以下の事が確認された。 1、Waller変性に際し見られるSchwann細胞の増殖にはポリアミンが関与し、シリコンチャンバーの設置、神経延長といった処置によるSchwann細胞増殖亢進は局所でのポリアミンレベルの上昇を介して生じている。 2、神経延長によるschwann細胞の増殖亢進は経時的に低下し、約3週間で通常のWaller変性でのレベルに落ちる。シリコンチャンバーモデルではチャンバー両端の神経片内では約3週間に亘り高レベルでのSchwann細胞の増殖が見られ、また術後7日よりチャンバー内に向かってSchwann細胞の遊走が始まり、術後10日でシリコンチャンバー内にSchwann管様構造を構築する。このSchwann管様構造内ではSchwann細胞の増殖は3週間以降も高レベルで持続する。 3、シリコンチャンバーモデルで見られたSchwann細胞の増殖、Schwann管様構造の形成にはmatrix metalloproteinase3が関与する。 4、神経栄養因子の-つであるBDNFがシリコンチャンバーモデルでのSchwann細胞増殖、Schwann管様構造形成に関与し、またBDNFのレセプターであるTrkBのうち今までglia系細胞では発現しないとされていたgp145がこのモデルではSchwann細胞にも発現することが確認され、BDNFがSchwann細胞の増殖、遊走に直接何らかの作用を及ぼしている可能性が示された。 最近成獣ラット坐骨神経よりのSchwann細胞の培養系を確立できたので今後はin vivoで確認きれた諸種現象の詳細をin vitroで検討する予定である。
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