炎症過程ではプロスタグランディン(PG)などのケミカルメディエーターが疼痛の発現に関与していることが報告されている。このPGの産生調節に関与するシクロオキシゲナーゼ(COX)には、2種類の誘導型異性体が同定されているが、炎症過程ではアラキドン酸カスケードの律速段階として重要な意義を持つCOX-2がサイトカインの刺激により誘導され、疼痛の発現に重要な役割を演じている。さて、腰椎椎間板ヘルニアは神経根性疼痛を主徴とするが、椎間板組織のCOX-2発現に関する報告は少なく、神経根性疼痛の発生機序も不明な点が多い。そこで我々は腰椎椎閥板ヘルニア組織におけるCOX-2の局在とその発現を検討し、神経根性疼痛の発生におけるCOX-2の関与を考察した。腰椎椎間板ヘルニアの手術時に採取したヘルニア組繊におけるCOX-2および炎症性サイトカインの局在を免疫組織学的に検討した。また、椎間板由来ヘルニア細胞をインターロイキン-1b(IL-1b)および腫瘍壊死因子a(TNFa)で6時間刺敵した後、培義細胞よりtotal RNAを分離し、RT-PCR法により椎間板由来ヘルニア細胞のCOX-2およびIL-1bmRNAの発現を検討した。また、免疫組織学的手法を用いてCOX-2、IL-1bおよびTNFaの局在を検討した。ヘルニア組織内の髄核細胞にはCOX-2、IL-1bおよびTNFaの局在が認められた。また椎間板由来ヘルニア細胞をIL-1bおよびTNFaで刺激するとCOX-2 mRNAの発現が誘導された。近年、椎間板ヘルニアにおける神経根性疼痛の発生過程には、機械的圧迫に加えて椎間板組織より産生される疼痛誘発物質の関与が報告されている。今回、椎間板由来ヘルニア細胞をサイトカインで刺激することによりCOX-2mRNAの発現が観察された。すなわち椎間板ヘルニアにおける神経根性疼痛の発現においてもCOX-2の発現を介したPGの産生が重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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