研究概要 |
腰椎椎間板ヘルニアにおける神経根性疼痛の発生機序、逆に臨床経過中に脱出したヘルニア組織が退縮または消失し症状が軽快する機序については不明な点が多く、本研究はこれらの点を明らかにする目的で行った。免疫組織化学的に検討すると、ヘルニア組織内の細胞にinterleukin-1(IL-1),tumor necrosis factor-α(TNF-α)などの炎症性サイトカインの局在が認められ、これらの細胞がヘルニアの消失や疼痛発現に関与していることが示唆された。また、ヘルニア組織内には、matrix metalloproteinase(MMP-1,3)の蛋白分解酵素の存在が証明され、培養したヘルニア細胞は炎症性サイトカインの刺激により蛋白分解酵素の産生を促進した。このことから脱出したヘルニア組織は、炎症性サイトカインにより刺激され放出された蛋白分解酵素により退縮する機序が示唆された。 神経根の疼痛発現にはprostagrandin(PG)が関与しているが、この産生調節にはcyclooxygenase-2(COX-2)が重要な役割を担っている。本研究においてヘルニア組織内の髄核細胞にはCOX-2の発現が証明され、IL-1やTNF-αによりCOX-2mRNAの発現が誘導された。以上より、椎間板ヘルニアにおける神経根性疼痛の発現には、COX-2の発現を介したPGの産生が重要であることが示唆された。
|