研究概要 |
インシュリン様成長因子(IGF)は軟骨細胞の増殖や文化の促進因子として知られているが、最近、IGF結合蛋白が、IGF作用の局所における調節因子として注目されている。本研究ではまず、軟骨細胞の産生するIGF結合蛋白(IGFBP)の発現調節のメカニズムを調べた。 生後8週のSDラットの関節軟骨細胞を培養し、培養液中のIGFBPをWestern-ligand blotting法で解析すると、40,32,29,24kDa付近にバンドを認め、免疫沈降反応により、それぞれ、IGFBP-3,-2,-5,-4であることがわかった。またIGF-I,-IIを添加するとIGFBP-5が著しく増加し、これらの増加作用は、IGFの異性体を使った実験より、type-IIGFレセプターを介したものであることが判明した。また、細胞層より全RNAを抽出し、mRNAの発現を調べたところ、IGF添加により、IGFBP-5 mRNAが4-5倍増加し、その産生が遺伝子レベルでも制御されていることがわかった。これらをRNAポリメラーゼII inhibitorであるDRBを、IGFと同時に添加するとその発現が完全にブロックされること、またIGF添加の有無にかかわらずmRNAの半減期は同じであることから、転写レベルでの調節が考えれた。このように、IGFはtypelレセプターを介して軟骨細胞に働き、蛋白レベルだけでなく遺伝子レベルでもIGFBP-5の産生を促進していることがわかった。IGFBP-5は骨細胞の増殖を促進することが報告されているが、軟骨細胞に対する直接作用はいまだ不明であり、おそらくIGFに結合することによりIGFの局所での作用を調節しているものと思われる。そして病的な状態では、IGFとその結合蛋白のバランスが崩れ、修復反応がさまたげられていることが推測され、今後はこの点を中心に研究をすすめていく予定である。
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