慢性関節リウマチ(RA)や変形性関節症(OA)では、関節液中のセイトカインやマトリックスメタロプロテアーゼにより軟骨基質や軟骨細胞の質的な変化が出現する。一方、CD44は様々な細胞表面に存在する接着分子でRAやOAの滑膜細胞に発現することが知られている。本年度は培養軟骨細胞でのCD44の発現様式について検討した。RAとOAおよび大腿骨頸部骨折(FF)の外科的手術時に採取した関節軟骨と成牛のcarpometacarpal jointより採取した関節軟骨より軟骨細胞を単離して浮遊培養し、細胞表面のCD44の発現についてフローサイトメトリーを用いて調査した。またウシ軟骨細胞では半定量的なreverse transcription-polymerase chain reaction (RT-PCR)法を用いて、軟骨細胞内のCD44のmRNAについて調査した。12時間浮遊培養したヒト関節軟骨細胞表面のCD44陽性細胞はRA、OAの軟骨細胞でそれぞれ42.9±10.0%、51.0±12.8%とFFの大腿骨頭軟骨での10.1±1.9%より高率に認められた(p<0.05)。一方、ウシ軟骨細胞では12時間、24時間と経時的に細胞表面のCD44の発現が増加した(p<0.05)。またCD44のmRNAの発現は12時間後にピークを認めた。関節軟骨細胞において細胞外マトリックスを除去した浮遊培養でCD44の発現を認め、RAやOAの軟骨変性への関与が示唆された。
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