概要:昨年度まで慢性関節リウマチ(RA)の関節軟骨細胞におけるCD44の発現を報告してきた。CD44の関節軟骨破壊に果たす役割を解析するには関節炎初期における動態を見る必要があるが、このようなRA関節軟骨を得ることは困難であり動物モデルを用いた研究が重要である。 今年度はRAの関節炎モデルであるマウスII型コラーゲン関節炎の膝関節軟骨における接着分子CD44の発現を検討し、その軟骨破壊において果たす役割を解析した。DBA/1マウス雄10週齢をFreund's incomplete adjuvantと混和したウシII型コラーゲンで感作し、3週後に追加感作を行った。3・4・5・6週後各々5匹を屠殺、膝関節を採取して0.5M EDTAにて脱灰後、パラフィン包埋した。トルイジンブルー染色、および抗マウスCD44モノクローナル抗体(IM7)を用いた免疫染色を行った。 Arthritis indexは3週で0.5±1.1、4週で1.8±1.8、5週で3.7±2.2であった。マウス膝軟骨において感作後3週で10膝中3膝、4週で10膝中7膝、5週で8膝中6膝、6週で10膝中9膝に部分的なトルイジンブルーのメタクロマジー消失を認めた。また、CD44陽性軟骨細胞を3週では10膝中1膝、4週で7膝、5週で8膝中5膝、6週で10膝中7膝に認め、感作後週数の経過に伴い発現頻度が増加した。コラーゲン関節炎の初期において軟骨基質破壊の所見であるメタクロマジー消失部位に一致して軟骨細胞にCD44の発現が認められた。以上より、軟骨細胞のCD44発現が軟骨変性過程に関与する可能性が示唆された。
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