1.セルオートマトン法による解析 生体骨のリモデリング解析にセルオートマトン法と有限要素法とを組合わせて用い、骨構造の再現を試みた。脛骨を想定し解析モデルを作成した。今回、力学的刺激の大小を表すために有限要素解析より得られたひずみエネルギーを用い、以下の結果を得た。 1)生体骨の持つ骨梁構造に類似した形態の構造を再現することが可能である。 2)力学的環境の変化により、骨の内部構造が変化する可能性がある。3)生体骨の基本形態は先天的決定因子の影響が強く、皮質骨と内部の海綿骨には別々のルールを適用する必要がある。また、骨は単に力学的刺激により形成された形態ではない。 4)今回、使用したエネルギー量はスカラー量であり、本来セルオートマトン法の特徴である離散量を用いることにより数値拡散の影響を受けないという性質を生かすことができなかった。力学的刺激という情報をいかに表現するかが今後の問題である。 5)今回、セルオートマトン法に用いたルールは作為的になることを避けるために、できるだけ単純化した。しかし、骨の再構築が骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞などにより行われていることを考慮すれば、今後の研究では、これら細胞間のルールを作成し、解析する必要がある。 2.3次元有限要素解析を用いた人工足関節置換後の足部の応力解析 切断肢の足部CT像より得られた画像を基に、要素数6000より成る解析モデルを作成した。足関節部に人工関節を挿入し、立位荷重時の応力解析を施行し、以下の結果をえた。 1)応力はコンポーネントのアンカー突起部に集中した。 2)挿入ポリエチレンの厚さが厚いほど、骨に生じる応力は小さく、また、応力の局所集中を緩和できた。今後、衝撃荷重、動的荷重の解析を行うと同時に、解析精度を向上させたい。
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