【目的】従来の人工足関節置換術後には、脛骨側コンポーネントの設置角度やアライメントの影響で、脛骨側コンポーネントの内側部に荷重が集中しやすいことは、すでに前回報告してきた。今回は、人工足関節置換術後に生じるlooseningの発生するメカニズムを明らかにし、ロバスト性(多少の誤差が入り込んでも大勢に影響を及ぼさない)を考慮した長期間安定する人工足関節の設計システムを確立させることを目的に奈良式人工足関節を基にして、その形状の最適化を行った。 【方法】患者より得た下肢X線像をもとに、足関節に現在日本で唯一使用されている奈良式人工関節を挿入したモデル(節点数;2729、要素数;2461、解析コード;ABAQU85.7)を作成し、統計学的最適化手法を用いて、荷重時の応力解析を行った。なお、骨、軟骨およびコンポーネントに使用されている材料のヤング率およびポアソン比は従来報告されているものを使用した。 【結果】我々はこれまで、人工関節置換術後に長期間安定した成績を得るために必要な最適なアライメントの推定を行い、昨年本報告書でも報告した。しかし、常に理想的な下肢アライメントが得られる保証はないため、アライメントに対しロバスト性という概念を導入し、計算を行った。その結果、FTAが176°〜184°の範囲で対応可能な人工足関節の形状が算出された。すなわち、奈良式脛骨側コンポーネントの幅を15.6mm、高さを、4.54mm、突起の傾斜角を60°に改良する必要がある。また、突起の上面と脛骨海綿骨との間にヤング率10.8×10^4Mpaの物質を充填すればコンポーネントと骨との間のストレス偏位が解消されることも知れた。今後、このデータを基に検証を行う必要がある。
|