研究概要 |
関節組織の加齢変化機序の解明を目的として,超微形態学的に,とくに細胞代謝機能の面から検討してきている。関節組織のうちでは関節軟骨に最も早期から加齢変化が出現することをわれわれはすでに確認しているが,とくにこの点をさらに詳細に検討し,関節老化の背景を解明するため,本年度はヒトの老化を基盤とする退行変性の代表的疾患としての変形性関節症における関節軟骨の細胞内変化を重点的に検討した。 軟骨細胞の胞体内には小脂肪滴の出現が目立ち,高度なものでは大きさも数も増す。同様に細胞内微細フィラメント様物質及びグリコーゲン顆粒の増量も認められ,これらの胞体内占有率が大となる。このような所見は,それぞれ脂肪,蛋白質,含水炭素の三大栄養素の細胞内での異常な蓄積状態と理解され,全体的に物質代謝の異常を示すもので,病態の初期変化として代謝異常の先行が考慮される。さらに興味深い所見としては,胞体内に層状膜構造を呈するミエリン小体様物質が認められることである。この出現は細胞の変性過程の1つを示すとみられる。変性した細胞内小器官の膜由来で,多量のリン脂質を含むとされるミエリン様小体の形成には,その含有成分にリン脂質を含む種々相のミトコンドリアの関連性が大であろうと思考する。これを示唆する所見として,変形や種々の著しい形態異常を呈するミトコンドリアが多数観察されたことは,細胞機能的に極めて重要であり,ミトコンドリアによる変性への関与が大きいと考えられる。 以上の如き結果を基盤として,次年度にはさらなる検討を加えて,引続き本研究をすすめていく所存である。
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