整形外科領域では各種疾患において、亢進した骨吸収による骨欠損の拡大が病変の進行に大きく関与する。その代表例として、人工関節置換術後の弛み、慢性関節リウマチにおける関節周囲への病的滑膜の侵入、あるいは腫瘍性病変の骨への浸潤などが挙げられる。 我々は、骨組織を含む硬組織を大型のクリオスタットを用いて凍結切片を作製してきた。この方法を用いると骨表面における細胞を各種モノクローナル抗体を用いて染色する事が出来、より詳細な細胞の分類が可能になる。さらに我々はラベルされた細胞を骨形態計測の手法を用いて計測し、各種病態における差異を定量的に分析することを試みてきている。その結果、人工関節の弛みの過程においては、一般に信じられてきた破骨細胞による骨吸収よりも生体材料から生じた磨耗片に反応して増殖したマクロファージ、或いは異物巨細胞がより重要な働きをする事を示してきた。(文献参照)今後の研究により各種病態において骨吸収の主役をなす細胞の種類その分布を明らかにし、それに基づいて病態に応じた骨吸収予防及び治療法を検討したい。
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