平成8年度は 1. ラット脛骨骨膜とハイドロキシアパタイト(以下HA)を組み合わせた血管柄付き人工骨のモデルを完成させ、経時的な骨量の増加を脱灰組織標本で評価できた。対照実験として筋膜とHAを組み合わせたモデルでは骨は形成されず、骨膜と血流の双方が骨形成に重要であることがわかった。 2. 骨膜のOsteocalcinをm-RNA発現レベルで測定した。 平成9年度は 1. 上記モデルで作製したHAを生化学的に定量し、経時的にそのALP活性値を測定した。また、経時的にOsteocalcinのm-RNA量を測定した。これにより、血管柄付き骨膜の骨形成を定量した。 2. 人工骨のvascularizationをmicroangiographyで経時的に評価した。骨膜モデル、筋膜モデルの両群とも、経時的にHA内への血管進入は進んでいたが、骨膜モデルにのみ骨形成が認められ、血管進入と骨形成には関連がないことがわかった。 (平成9年11月20、21日 日本マイクロサジャリー学会 東京 において口演した) 平成10年度は 1. m-RNA発現レベルでのOsteocalcin量を比較検討し、平成8、9年度に確認した蛋白発現に先行して発現していることを確認した。また、術直後から骨膜が骨形成能を持つことがわかった。 (平成10年10月30、31日 日本マイクロサジャリー学会 東京 において口演した) 2. 上記HAに骨髄細胞を注入したモデルを作製し、より早期の骨形成が確認できた。術直後から多数の軟骨細胞が骨膜下に出現し、その後骨形成が生じた。術後1週の骨髄細胞注入モデルは注入しないモデルに対し、有意にALP活性値が高かった。骨髄細胞は、本モデルにおいて未分化間葉細胞の骨芽細胞への細胞分化を促進していると考えられた。
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