実験動物を使って側弯症の2次元、3次元モデルを作成して、これに矯正手術と同様の操作を加える、または矯正操作時に脊髄障害発生の原因の1つと推定している椎弓根による圧迫を再現しながら脊髄モニタリングの変化を観察し、矯正操作のなかでどの操作が最も電位に変化を与えるかを明らかにすることを目的とした。 側弯症のモデルに使用される実験動物は、うずらやマウスが多く用いられてきた。しかしながら、うずらやマウスでは小さいことから矯正操作を加える実験を行うことは困難である。一方、脊髄モニタリングの実験動物としては従来ネコが多用されてきた。社会情勢など諸般の事情からネコの使用が次第に困難となりつつあり、より簡易に入手できる他の実験動物が必要と考え白色家兎を用いて実験を行った。しかしながら、側弯症モデルを作成するための固定器の設置と脊髄モニタリングを行うための手術操作に関する問題点がなお解消できない。現在、実験動物をネコに変更して側弯症モデルを作成することを検討中である。 動物実験と平行して側弯症手術における神経合併症発生の原因を追究するため、側弯症手術時に脊髄モニタリング電位に変化を生じた臨床例をretrospectiveに検討したところ、重度側弯症で術前脊髄偏位度の高度な例に変化例が多く、椎弓根切除術により電位に回復をみた。この結果から重度側弯症では3次元的に偏位した脊髄に対し、矯正操作にともない椎弓根が何らかの作用を及ぼしていることが示唆された。
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