研究課題/領域番号 |
08671693
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
出沢 明 帝京大学, 医学部, 助教授 (90237024)
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研究分担者 |
出沢 真理 千葉大学, 医学部, 助手 (50272323)
山根 友二郎 帝京大学, 法学部, 教授 (50009586)
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キーワード | tight junction / 神経再生 / 磁場 / ZO-1 |
研究概要 |
末梢神経系が損傷を受けたのち再生する際、どのような機構が働きまたどのような因子が関与しているのかを調べるために成体ラットの坐骨神経を用いて実験を行った。麻酔下に坐骨神経を完全に切断したのち再吻合し、術後1週から4週までの期間において経時的に還流固定を行い、切断端より遠位側(末梢側)の坐骨神経片を観察した。術後1週までの間において、一般的にWaller変性として知られているシュワン細胞の形態的変化、すなわち脱ミエリン化、増殖、遊走等が見られ、切断端より伸長してきたほとんどの再生神経線維はシュワン細胞と接触しているのが観察された。術後2週までの再生神経線維は多くがシュリン細胞によって単に包まれているだけの無髄神経の状態であるが、4週までの間に再ミエリン化する神経線維も観察された。無髄神経の状態にある再生途上と思われる神経線維の細胞膜構造を調べると、すぐ隣接し接触しているシュワン細胞との間に細胞膜外膜同士の癒合が見られ、凍結割断法においてこれらは膜内粒子にして10から20個程の非常に短いtight junctionであることが判った。さらにtight junctionにassociateしていると言われているZO-1の局在を免疫組織化学的、とくに免疫電顕を用いて調べたところ、再生神経線維とシュワン細胞間における細胞膜癒合部位にほぼ一致して、ZO-1の局在が認められた。一般にtight junctionは腸管上皮や肝細胞において見られるように、同種の細胞間において形成され、barrier構造としての役割を果たしているものと考えられてきた。しかし、神経再生時のように組織構造自体が流動的な特殊な状態においては、神経線維と末梢生グリアであるシュワン細胞との異種間細胞においても一時的に形成されることが示唆された。今回見い出されたような小規模なtight junctionの機能については、その長さが非常に短いことから従来考えられていたようなbarrierとしての機能ではなく、むしろ再生線維がシュリン細胞を足場にして伸長する際の機械的な接着構造として一時的にその機能を果しているのではないかと推察される。
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