研究概要 |
脊柱靭帯骨化症は進行すると脊髄圧迫症状が出現し、患者のQ.O.L.を著しく低下させるだけでなく、症状が現れない時点でも軽微な外傷をきっかけとして脊髄症状を出現させることがある。現在本疾患は厚生省難病特定疾患に指定されており、当教室が所属する厚生省脊柱靭帯骨化症調査研究班を中心に各施設において調査研究が行われている。我々は脊柱靭帯骨化症は全身的骨化素因を有し、その部分現象として脊柱靭帯骨化が認められるという仮説を立てた。そこで今回はまず、当教室で現在行っている培養靭帯細胞が産生する各種増殖因子の測定やエストロゲン存在下での測定を継続して行った。さらに全身的骨化素因の1つとして末梢単核球に着目し、健常人と骨化症患者の末梢単核球殖能の比較やそれらのエストロゲン存在下での比較検討を行った。 1、 研究の続行として靭帯細胞の長期継代を試みており、これは本研究終了後も継続して検討する。 2、 昨年度は全身的な骨化を導く因子として末梢リンパ球の細胞性免疫能の異常を想定し、これを証明する研究を行った。その結果T細胞、B細胞共に機能の低下が示唆された。特にT細胞機能低下は各種サイトカインや増殖因子産生に影響する可能性があり、T細胞機能についてさらに詳細な検討を重ねる必要性が生じた。そこで本年度はT細胞をさらにCD4陽性T細胞に分画しその抗CD3抗体反応性および刺激時のIL-2産生能を検討した。CD4陽性T細胞はCD4分離用カラムを用いてnegative selectionにて精製し、精製率90%以上のものを用いた。対照は閉経期の健康な女性とした。その結果、患者群では抗CD3抗体反応性および刺激時のIL-2反応性が対照に比較して明らかに低下していた。また、各種増殖因子反応性も昨年度の末梢単核球を用いた検討と同様、患者群で健常者群に比較して増殖因子添加による抑制が見られた。さらに患者群と健常者群ではCD4陽性T細胞数に相違が見られないことから患者群におけるT細胞機能異常はCD4陽性細胞の機能異常によることが明らかとなった。3、 血清中の各種増殖因子を昨年に引き続きRIA,ELISA法で測定した。その結果、TGF-β,b-FGFが患者群で低下傾向にあることが明らかとなった。 3、 脊柱靭帯骨化症のタイプ別にこれまでの結果をまとめると、症状の重い分離分節型で免疫能の低下、増殖因子の産生がより強いことが明らかとなった。
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