寛骨臼回転骨切り術、寛骨臼移動術は股関節臼蓋形成不全に対する代表的な観血的治療法であるが、重篤な術後合併症として移動した寛骨臼での骨壊死の発生がある。この原因を究明するために、吸入式水素クリアランス法を用い、股関節の血行動態に関する実験的研究を行ってきた。平成8年度から9年度にかけて吸入式水素クリアランス法を用い、荷重部寛骨臼の血行動態に関する実験的研究を行なった。成熟犬12匹を材料とした実験結果では、寛骨臼の血流は殆ど殿筋群からの血管に由来することが判明した。このことを第65回米国整形外科学会で発表した(平成10年3月20日、NewOreans)。これらの実験結果より、寛骨臼へ付着する殿筋群を全く剥離せず寛骨臼を回転させる骨切り術、Curved Perlacetabular Osteotomyを考案した。この術式での術中、骨切り前後の循環動態の検索を非接触性のレーザー血流計(ALF21N)により行った。骨切り部を展開した後、骨切り部の近位側と遠位側、及び術野に於いて骨切り部から最も離れた部位(Reference Point)の3ヶ所の血流を骨切り前後で測定した。この術式では、寛骨臼への血流が良好に保たれることが判明した。このことを第66回米国整形外科学会で発表した(平成11年2月4、5日、New Oreans)。
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