「実験1」 不動化後の骨動態の経時的変化を知るために、6週齢のマウスを用い、右後肢座骨神経切除と神経同定のみの左Sham手術を行ない、最長42日間の飼育実験を行なった。両脛骨を採取し、硬組織標本を作製し、近位骨幹部での骨形態計測を行った。その結果は、以下の通りである。 1)海綿骨量は、不動化後14日以降で有意に低下した。 2)骨形成率は、不動化後7日と12日に時点で、有意に一過性に低下し、その後再びSham群と同じレベルに戻った。 3)神経切除による不動化後に一過性の局所的な破骨細胞数の増加があった。 「実験2」 骨不動化後の骨髄における分化異常を知るために、第1実験と同様にマウスを処置後、右脛骨より骨髄細胞を無菌的に採取し、細胞培養実験を行なった。骨芽細胞系及び破骨細胞系への分化の状態を調べた。その結果は、以下の通りである。 1)不動化直後一過性にadherent stromal cell(接着能力のある細胞)数の低下を認めた。Alkaline phospatase活性は経時的に低下した。CFU-f(colony forming unit-fibroblastic)のレベルでは不動化による影響を認めなかった。 2)不動化骨髄では、PTH(parathyroid hormone)による破骨細胞形成過程が促進されていた。 以上のことから不動化された骨における骨形成の低下と骨吸収の上昇は、骨髄基質細胞の分化の振り分けの異常と破骨細胞前駆細胞の最終分化段階でのPTHに対する感受性の上昇を伴っていることが明かとなった。
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