不動化骨髄での破骨細胞と骨芽細胞の分化異常の解明と不動性骨萎縮の治療法の開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08671706
• 研究機関: 産業医科大学
• 研究代表者: 酒井 昭典 産業医科大学, 医学部, 講師 (90248576)
• 研究分担者: 中村 利孝 産業医科大学, 医学部, 教授 (50082235)
• キーワード: 不動化 / 骨髄細胞 / 骨粗鬆症 / 副甲状腺ホルモン / フローサイトメトリー / RT-PCR / mRNA / マウス

研究概要

平成10年度の本研究の目的は、不動性骨萎縮における骨髄細胞の分化異常を、細胞及びmRNAレベルで明らかにすることである。
実験方法:8週齢の雄ddYマウスを用いて、右後肢坐骨神経切除を行ない(Nx群)、骨不動化モデルを作成した。左後肢は神経同定のみのsham手術を行なった(Sham群)。実験開始時、手術後1、2、4週で屠殺し、骨髄細胞を採取した。各群10匹である。1)FACS分析を用いて、骨髄細胞のpopulationの変化を調べた。2)RT-PCR法で、骨基質蛋白のmRNAの発現を調べた。
実験結果:1)FACS分析の結果、Mac-1抗体陽性細胞の骨髄細胞中の割合は、Nx群、Sham群の両群間に差を認めず、1、2週では29〜40%、4週では5%と、一緒に変動した。VCAM-1抗体陽性細胞の割合も、両群間に差はなく、1週では0.3〜0.4%、2週では1.2%、4週ではSham群2.2%、Nx群2.5%と、ともに経時的に増加した。2)骨髄からAGPC法によって、total RNAを抽出し、RT-PCR法でmRNAの発現を調べた。電気泳動のバンドのdensityを画像解析装置で計測し、β-actinで補正することで、半定量的に比較した。その結果、不動化後1週の骨髄におけるPTH/PTHrPのmRNAは、Sham群に比べて、6.02倍、osteocalcinは6.77倍、osteopontinは0.88倍、osteoclastogenesis inhibitory factor(OCIF)は8.65倍であった。
これらの結果から、不動化後の骨髄では、macrophage leneageに変化を生じていないことがわかった。接着分子であるVCAM-1にも変化はなかった。PTH/PTHrP mRNAが、不動化骨髄で多く発現しており、PTH/PTHrPシグナル伝達の持続的な亢進が存在していることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 酒井昭典: "運動制限モデル実験" Clinical Calcium. 8・6. 50-52 (1998)
• [文献書誌] 中村利孝、ほか: "骨不動化における骨組織動態と骨髄の細胞" 日本骨形態計測学会雑誌. 8・1. 25-31 (1998)
• [文献書誌] Sakai A,et al.: "Bone marrow cell development and trabecular bone dynamics after ovariectomy in ddy mice." Bone. 23・5. 443-451 (1998)
• [文献書誌] 酒井昭典、ほか: "新しい骨作用薬(3)副甲状腺ホルモン(PTH)" 腎と骨代謝. 11・4. 427-431 (1998)
• [文献書誌] Sakai A,et al.: "Human parathyroid hormone(1-34)prevents immobilization-related bone loss by regulating bone marrow capacity for bone cells in mice." Transactions of the third combined meeting of orthopaedic research societies of U.S.A.,Canada,Europe and Japan. 153 (1998)
• [文献書誌] 酒井昭典、ほか: "骨粗鬆症の病態と発症機序(3)不動化と骨粗鬆症" 臨床科学. 34・10. 1320-1326 (1998)
• [文献書誌] 沖本信和、ほか: "ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)週一回間欠投与および休薬が卵巣摘除ラット皮質骨の力学強度に及ぼす影響とその組織学的機序" 日本骨代謝学会雑誌. 15・7. 177-181 (1998)
• [文献書誌] Okimoto N,et al.: "Effects of a weekly injection of human parathyroid hormone(1-34)and withdrawal on bone mass,strength,and turnover in mature overietomized rats." Bone. 22・5. 523-531 (1998)