疼痛刺激は、脊髄内のC-fosなどの酸素誘導を来すことが知られているが、一酸化窒素合成酵素を誘導し、疼痛記憶に関与している可能性がある。疼痛刺激のみならず、温熱、冷却、電気的刺激などの各種刺激を用いて一酸化窒素合成酵素含有細胞数の変化を観察し、刺激の種類によって酵素誘導が生じるか否かを組織科学法によって明らかにする事を目的として以下の研究を行った。 ラット36匹を各群12匹とし、1、2、3群とした。 1 正常ラットの足底部に生理食塩水10μ lを注入し対照モデルとする。 2 右下肢に、ドライアイスをのせ、寒冷刺激を与えた。 3 右下肢を、53度の温水し浸し温熱刺激を与えた。 上記1、2、3のモデルに対し、刺激投与6時間、24時間後、各6匹に対し、ペントバルビタール麻酔下に脊髄を生理食塩水、脱血還流後採取し、4%ホルマリン液で24時間固定した後、10%蔗糖液で凍結保護を行い、矢状面で切片を作成し、NOSをHADPH-diaphoraseを用いた組織化学法で染色した。 正常コントロールと電気刺激モデルのNOS含有細胞の増減を比較した。 結果:正常群では脊髄後角のNOS(HADPH-diaphorase)陽性細胞数は1-3層で19-23が観察されたのに対し、ドライアイス、温熱刺激ともに20-25で増加は見られなかった。以前のホルマリン刺激では32まで増加しているのが観察されており、刺激法の違いによる差異が認められた。
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