研究概要 |
平成8年度 一過性局所脳虚血に対するPPBPの治療効果に関する研究 ウィスター系ラットのオスでハロセン麻酔下に右頚動脈より中大脳動脈分岐点まで4-0ナイロン糸を2cm挿入して、虚血を作成し、2時間後にこれを抜去し、再潅流を行った。虚血1時間後より、σレセプタに親和性の高いPPBP[4-phenyl-1-(4-phenylbutyl)piperidine]または生理食塩水を静脈内持続注入した。22時間の再潅流後、脳を2mmの厚さにスライスして、2%の2,3,5- triphenyltetrazolium chlorideにより染色し、大脳半球および、線条体の傷害体積とその比率を求めた。線状帯の傷害体積は、コントロール群が44±4mm^3に対して、PPBPで治療した群が19±4mm^3小さかった。しかし、大脳皮質の傷害体積は統計学的な有意差を認めなかった(コントロール群136±27mm^3;PPBP群,80±28mm^3)。この結果から、一過性の局所脳虚血に対して、σ受容体リガンドの投与は治療効果があることを示唆している。 平成9年度 一過性局所脳虚血に対するσレセプタサブタイプの脳保護効果に関する研究 上記同様のモデルで、虚血1時間後より、σ_1レセプタに親和性の高い(+)ペンタゾシンまたは、σ_1レセプタに親和性のない(-)ペンタゾシンを静脈内持続注入した。線状帯の傷害体積は、(-)ペンタゾシン群は44±5mm^3に対して、(+)ペンタゾシンで治療した群が19±4mm^3と小さかった。また、大脳皮質の傷害体積は、(-)ペンタゾシン群134±29mm^3に比し、(+)ペンタゾシン群は26±12mm^3と小さかった。 この結果と(+)ペンタゾシンがσ_1レセプタに強い親和性をもっていることから、一過性の局所脳虚血の保護作用に関して、σ_1受容体が重要な役割を演じていると考えられる。
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