高度の術後低酸素血症は、術後の重篤な循環器系合併症の原因となり得る。本研究では術後夜間低酸素血症の危険因子・成因・治療法について検討した。術前、術後2から4病日の夜間に、パルスオキシメトリーを行い、基準値より4%以上の酸素飽和度(SaO2)低下の回数(ODI)、SaO2が90%以下となる時間の割合(CT90)、およびSaO2の最低値を求めた。術後、ODIの変化は有意ではなかったが、CT90とSaO2最低値は有意に悪化した。多変量解析の結果では、術前のODIと出前睡眠時に無呼吸を指摘された病歴が、術後の夜間低酸素血症の主な危険因子であった。術後の夜間酸素投与により、低酸素血症を防ぐことはできたが、無呼吸や低換気による脈拍数の変動は抑制できなかった。また、重症の睡眠時無呼吸患者では、低酸素血症の発生を予防できないばかりでなく、無呼吸時間の延長を認める症例もあった。したがって、術後夜間の低酸素血症の治療として、酸素投与は必ずしも適切ではないと考えられた。
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