研究概要 |
糖代謝時に見られる肝細胞のゾーネーションと増殖がどのような関係にあるのか検討した。BUN、ALTにおけるPPH/PVH比はいずれも約2倍、逆にグルタミン合成酵素活性におけるPVH/PPH比は9〜13倍であり、PPHとPVHの確実な分離が確認された。細胞周期への影響を検討した結果PPH、PVHのDNA合成のピークは摂食、絶食下いずれも48〜72時間後で有意差は見られなかった。摂食時、HGF/SFによって刺激されるDNA合成の最高増加率は、コントロールに比べPPHで7倍、PVHで12倍で、PVHの方がPPHに比較して高い反応性がみられた。逆にEGFでは、PPHで16倍、PVHで10.5倍で、PPHの方がPVHに比較して高い反応性がみられた。絶食時には、HGF/SF下の最高増加率は、PPHで4.6倍、PVHで7.1倍、EGF下ではPPHで4.9倍、PVHで9.2倍といずれも摂食時と比べて反応性が低下した。更にHGF/SF下ではPVH>PPHであり、摂食時と同様の結果が得られたのに対して、EGF下では摂食時と逆の傾向(PVH>PPH)を示した。つまりHGF/SF、EGFに対する反応性は48時間の絶食によって低下し、さらに各ゾーンのEGFへの反応性は絶食によって反転することがわかった。[^<125>I]HGF/SF特異的バインディングアッセイの結果、摂食時、絶食時ともにPPH,PVHの間に有意差は認められず、またHGF/SFのレセプターはともに単一であると考えられた。[^<125>I]EGF特異的バインディングアッセイの結果においてもPPHとPVHとの間に有意差は認められなかったが、EGFのレセプターは摂食、絶食時ともに2種類存在するものと思われた。したがってHGF/SF、EGFに対する反応性の違いは、セレプター以降の原因に由来すると思われた。EGFは糖新生を促すといわれているが、栄養状態が逆に増殖因子への反応性を変化させることが示唆された。
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