再生時のゾーネーションによる増殖因子への反応性とその推移について明らかにするために、肝切後6時間から1カ月経過したラットより採取したPPH、PVHにおいてDNA合成、レセプターの推移を検討した。まず肝切除後2週間以内に採取した肝細胞においては特異的酵素の分泌が減少しており、ゾーネーションの形成が十分でない可能性が考えられた。肝切後12時間以内はG_1-M期が早まり、細胞周期が短くなっており、G_1-M期のDNA合成の推移ではcontrol(増殖因子非添加)での肝切除後のDNA合成能増加のピークは、過去の報告と同様PPHがPVHより早期に出現した。しかし増殖因子添加時の推移をゾーンに分けて検討した報告はなく、我々はHGF/SF、EGF添加後はPVHがPPHより早く最低値を示し、肝切前値までの回復は逆にPPHのほうがPVHよりも早いことを示した。以上より肝切除後の肝再生はゾーンによって異なり、増殖因子の有無や種類で変化することが考えられた。レセプターバインディングアッセイの結果ゾーネーション差異は顕著でなかったが、レセプター数は12時間前後で最も減少し、その回復には2週間以上かかった。したがって肝切除後12時間前後に採取した肝細胞では、増殖因子分泌増加後の増殖因子に対する反応性の低下は、レセプターの滅少で説明できる。しかし回復時間には違いが見られ、レセプターの回復はDNA合成の回復より1週間以上遅れており、DNA合成における増殖因子への反応性の増加はレセプターの増加では説明できない。また肝切後のレセプター数においてもゾーンによる差は認めなかったことより、DNA合成における増殖因子への反応性の違いは、レセプター以降の細胞内情報伝達系でも調節されている可能性が考えられた。
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