研究課題/領域番号 |
08671717
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
多賀 紀一郎 新潟大学, 医学部・附属病院, 講師 (00163329)
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研究分担者 |
藤原 直士 新潟大学, 医学部・附属病院, 講師 (70181419)
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キーワード | 脳虚血 / 虚血耐性 / Spreading Depression / 麻酔薬 / 細胞内遊離カルシウム / グルタミン酸 |
研究概要 |
本年度は以下のような検索を中心に研究を進めた。 1.脳虚血に対する虚血耐性を獲得させるSpreading Depression(以下SD)を虚血前に発生するように前処置しておくと、そのような前処置をしていないものに比較して脳虚血に対してグルタミン酸の放出などでいかなる違いが認められるか、ラットの脳スライス標本を用いて検索した。SD前処置後1日のラット脳スライス標本を用いて、低酸素・無グルコース負荷による大脳皮質神経細胞外遊離グルタミン酸の上昇を観察した。SD前処置した側の神経細胞と前処置しなかった側の神経細胞間には、グルタミン酸上昇発生までの時間に差は認められなかった。上昇の程度に関しては、ごく僅かな操作・体動や出血などに対してもセンサーが鋭敏に反応し、定量的に判定することはできなかった。 2.麻酔薬の虚血耐性誘発に及ぼす影響を検索した。インフルレンまたはケタミンで麻酔を施行しながらSDを誘発させる前処置を行い、その1・3および7日後に脳虚血を負荷した。虚血負荷3日後の脳組織標本において、障害脳神経細胞数を顕微鏡下に計測した。その結果、頭蓋骨にバ-ホールを開けただけの疑似手術を行ったラットに比較して、インフルレン麻酔下でSDを発生させた後に脳虚血を負荷したラットの方が有意に脳神経細胞の障害が少ないことがわかった。またケタミン麻酔下でSDを誘発させる前処置を行い、その後同様に虚血負荷を加えたものでは、インフルレン麻酔下でSDを誘発させる前処置を発生させたものに比べ神経細胞の障害が大きく、疑似手術群のものと有意差が認められなかった。このことより、ケタミンがNMDA受容体の拮抗薬でありSD誘発を抑制することなどから、このような虚血耐性獲得にはNMDA受容体を介した機序が関与している可能性が示唆された。
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