研究概要 |
初年度の研究目標である門脈と肝動脈から潅流する犬の摘出潅流肝標本は予定どうり作成しえた。本潅流の特徴は肝動脈は定圧潅流で肝動脈圧が70mmHgに維持した。また、門脈は定流量潅流で行い、門脈圧を6-9mmHgとなるようにした点である。肝動脈、門脈、肝静脈を同時に閉塞した時に各々の圧が平衡に達する圧であるtriple occlusion pressure(Pto)を測定し、このPtoが、肝毛細管圧を反映するかをgravimetric法で測定した肝毛細管圧(Pci)と比較した結果、両者は非常によく相関した。すなわちPto=-0.02+0.98Pci;r=0.83,P=0.0018。さらにこの相関直線の傾きは1.00と有意差はなく、かつまたその切片は0.00とも有意差はなく、完全に両者は一致することが示された。Ptoは4.4mmHgから5.9mmHgに及んでいた。また、この標本のbasal levelの正常値は門脈圧7.4±0.2mmHg,肝静脈圧0.9±0.1mmHg,肝動脈圧70±1mmHg,門脈血流量190±7ml/min/100g,肝動脈血流量69±3ml/min/100gであり、Ptoは5.0±0.1mmHgであった。さらに肝血管抵抗の分布は門脈抵抗は0.014±0.001mmHg/ml/min/100g,肝静脈抵抗は0.016±0.001mmHg/ml/min/100g,肝動脈抵抗は1.020±0.048mmHg/ml/min/100gと肝静脈抵抗の総肝血管抵抗に関する比率は0.54±0.01であった。すなわち、イヌの肝臓においては肝静脈抵抗である後毛細血管抵抗は総血管抵抗の約半分を占めることが示唆された。
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