Sprague-Dwaley雄ラットを対象として、ハロセン麻酔下に、外頚静脈、内頚動脈にカニュレーションを行う。気管切開し、筋弛緩薬で不動化し、人工呼吸による管理を行った。第4、5腰椎間よりくも膜下腔にカテーテルを留置した。下部胸椎から上部胸椎にかけて椎弓切除を行い脊髄を露出微小電極を用いて単一の脊髄後角細胞を導出し、記録した。その細胞の触刺激に対する受容野を調べ、また侵害刺激として熱刺激およびピンチ刺激を与え、反応を記録しコントロール値とした。くも膜下腔内に留置したカテーテルよりカルシウムチャンネル阻害薬(ヂルチアゼム:100-1000μg)を投与し、その後5、10、20、30、60、90、120分まで、受容野及びそれぞれの刺激に対する反応の変化を観察した。その結果、受容野の大きさ、ならびに各侵害刺激に対する反応は薬剤投与直後から抑制された。その抑制の程度ははヂルチアゼム投与後10-20分で最大となり(500μgで約90%)、その後、徐々に抑制率は減少したものの、投与120分後においても抑制されたままであった(500μgで約50%)。また、その抑制率は量依存性であった。血圧はヂルチアゼム投与直後に低下したが、投与10-20分後にはコントロール値にまで回復しており、今回の脊髄後角細胞の刺激反応の抑制には影響していないと考えられた。これらの結果より、カルシウムチャンネルが脊髄における疼痛伝達およびその制御に関与していることが示唆された。
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