研究概要 |
Wistar系雄ラットを用い,蔗糖濃度勾配法で心房ムスカリン受容体とその共役系を含む膜画分を作成した.その膜画分に揮発性吸入麻酔薬を作用させた後、ラジオアイソトープを用いた受容体結合実験を行い,揮発性吸入麻酔薬の心房ムスカリン受容体-共役系に対する影響を検討した。 1.各種麻酔薬による受容体結合能の差異の検討 (受容体結合実験-Scatchard解析) [3H]QNBとAF-DX116を用いて受容体結合実験を行った。そこに揮発性吸入麻酔薬(セボフルレンまたはイソフルレン)を加え、麻酔薬による差異を検討した。Scatchard解析し受容体数(Bmax)および解離定数(Kd)を求めた.両麻酔薬とも麻酔薬濃度依存性にKdは増加し、同麻酔薬濃度ではセボフルレンよりイソフルレンの方がKdが大きいことが判明した。Bmaxは、いずれの濃度でも有意な変化を認めなかった。 (受容体結合実験-結合阻害) AF-DX116の濃度を変化させ逆S字状のDISPLACEMENT曲線を作成した。これより10^<-7>mol付近にIC_<50>があることが判明したが,正確なIC_<50>を求めるまでには実験がたらずKi値は求められなかった. 2.各種麻酔薬による心房機能の差の検討(cAMP産生速度を比較) 受容体とアデニル酸シクラーゼを含んだ膜画分を用い,基質であるATPからcAMPを産生させた.単位時間当たりのcAMP量を測定しcAMP産生速度を比較した。この実験系にセボフルレンあるいはイソフルレンを加え、差異を検討した.両麻酔薬とも麻酔薬濃度依存性にcAMP産生速度は低下し、同麻酔薬濃度ではセボフルレンよりイソフルレンの方がcAMP産生速度の低下が小さいことが判明した。 3.麻酔薬作用後,除去し可逆性の検討 いずれの実験においても麻酔薬を作用させた後、除去したものは麻酔薬を加えないものとほぼ同じ値をとることが確認できた。
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