本研究目的は、アナフィラキシ-ショック時の交感神経活動の抑制の役割を明らかにすることである。今年度の実験計画では、麻酔下感作家兎において、本ショック発現の確率を、さらに確実なものとするとともに、同ショック時の交感神経活動を、これまでより、さらに長時間安定して記録することを可能とすることも重要な課題であった。 具体的な結果では、圧受容体が正常の動物では、本実験法で惹起されたアナフィラキシ-ショック時には(ウシアルブミンによって感作)、血圧低下に伴い、心拍数および腎臓交感神経活動が低下した。このアナフィラキシ-ショック時の交感神経活動の機序を検討するため、頚部迷走神経切離または頸動脈洞神経及び大動脈神経切離を行い検討した。頚部迷走神経切離を行うと、圧受容体反射が温存されている正常群で見られた、同ショック時の低血圧に際した交感神経抑制が消失した。一方、頸動脈洞神経及び大動脈神経を切離した動物では、同ショック時の交感神経抑制は、さらに著明となりそれらの動物は、短時間内に死亡した。これらの結果は、ウシアルブミンで感作された家兎における、アナフィラキシ-ショック時の交感神経活動低下は、主に迷走神経を介する可能性が示唆された。その際中心静脈圧の著明上昇を伴っており、その迷走神経を介する交感神経抑制には、低圧系圧受容体の興奮に起因する迷走神経求心性入力が延髄の血管運動中枢に対し抑制性に作用したものと推察される。しかし、調圧神経系をすべて切離した動物においても、同ショック時に、交感神経活動低下が出現したことから、末梢の圧受容体以外を介する機序の存在も示唆された。 今回のもう一つの重要な検討項目である同ショック時の各種化学伝達物質やサイトカイン動態については、結果のばらつき大きく、一定した傾向は得られていない。今後、これらの生化学的検査項目を、さらに絞り込み検討する必要がある。
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