我々は視床痛で長期間悩まされている症例に対して、大槽内にメチルプレドニゾロン125mgを注入することにより良好な鎮痛効果を得ている。 その鎮痛機序の解明のために以下の実験を行った。NMDAレセプターに関与するケタミン麻酔を避けて、成猫にネンブタール30mg/kg腹腔内投与後に気管内挿管を行い、酸素、亜酸化窒素、イソフルランにて麻酔を維持した。前頭部で開頭を行うか、burr holeを設け、さらに脊髄視床路刺激電極挿入のための椎弓切除を上部胸椎で行った。Snider & NiemerのAtlasに従い、第3脳室に30ゲージカテーテルを挿入し、視床に白金微小電極を挿入した。 視床に挿入した微小記録電極より、電気活動を記録した。麻酔深度を一定に保ち、数時間の経過観察により、当初は不規則な異常放電すなわちsmall spike、large spike、irregular burstなどの放電がほぼ単一放電となったところで、脊髄視床路の刺激を行うと再びirregular burst firingが認められた。そこで第3脳室内に挿入したカテーテルより50〜300μgのメチルプレドニゾロンを注入すると高頻度の不規則な自発放電やirregular burst firingが数10分以内に単一放電となった。この状態で脊髄視床路の刺激を行うとコントロールと同様にirregular burst firingを認めたが、単位時間当たりのburst firingは抑制された。 以上の結果、すなわちburst firingの抑制が視床痛で鎮痛効果の機序として推測されるが、さらなる研究が必要である。
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