研究概要 |
ラツトに人工肺を用いた部分対外循環を施行し,以下の結果を得た。 方法:Wistar系ラット9匹(411±49g,mean±SD),4匹(288±25g)で,それぞれV-V,V-AバイパスECLA(以下V-V,V-A)を施行した。麻酔はペントバルビタール50mg/kgの腹腔内注射で導入,ECLA中は酸素+笑気(FiO_2:0.5)で維持した。送血のためV-Aでは右総頚動脈に,V-Vでは左大腿動脈にサーフローカテーテル(24G)を留置した。脱血のため右鎖骨下静脈分岐部よりV-Vでは側孔付きアトム管(6Fr.),V-Aでは側孔付きサーフローカテーテル(18G)を右房に留置した。ポンプはV-Vではマイクロチューブポンプ,V-Aでは輸血ポンプを使用した。膜面積0.04m^2の小型中空糸外部灌流型人工肺を用い,ヘパリン添加乳酸加リンゲル液で無充血充填後,部分体外循環を施行した。ECLA中の人工呼吸器の換気条件を変えず,人工肺への酸素吹送はFiO_2:1.0,0.2-4 L/分で行った。ECLA時間及びバイパス血流量,人工肺出入口の血液ガス,血液電解質,ヘモグラムを経時的に測定した。 結果:(1)V-V,V-Aの平均体外循環時間は34分,83分で平均バイパス血流量は9.6±5.4ml/kg/分,35.0±3.3ml/kg/分であった。(2)V-V,V-Aでそれぞれ人工肺出口でのPO_2は153〜614mmHg,385〜573mmHg,一方PCO_2は8.1〜62.5mmHg,7.8〜34.4mmHgが得られ,十分な酸素加と炭酸ガス除去効果が認められた。(3)V-V,V-AでECLA開始5分後,ヘモグロビンは6.3g/dl,6.8g/dl,ヘマトクリット値が17.9%,18.3%とECLA前値と比較してそれぞれ有意に低下したが,V-Aで経時的な変化は認められなかった。(4)V-V前後で電解質の変化は認められなかったが,V-AでECLA前値と比較してKが経時的に有意に上昇した。 まとめ:無輸血充填による血液希釈,溶血による高K血症が生じたが,ラットを用いたV-AバイパスECLAはバイパス流量も良く保持され,最高150分間施行できた。
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