研究概要 |
実際に交感神経と迷走神経活動を記録しながら,メタコリンまたはカプサイシンで引き起こした気道収縮に対する硬膜外麻酔の影響を調べた。 実験にはネコを用いた。ペントバルビタールの腹腔内投与で気管切開を行った。パンクロニウムで不動化し,人工呼吸器を用いて換気した。心臓交感神経,迷走神経活動を導出記録した。気道収縮の評価は,最大気道内圧(cmH20)とコンプライアンス(ml・cmH20^<-1>)を用いた。気管支平滑筋を収縮させるため,生理食塩水で溶解した0.2%メタコリンまたはカプサイシンを,気管内に噴霧した。噴霧から15分間,気道内圧の増加とコンプライアンスの低下を確認し,変動しないことを観察して,硬膜外腔へ20%リドカイン1.0mlを注入した。リドカイン注入前と注入15分後を比較した。 メタコリン投与で,最大気道内圧は10.6±1.1から13.4±1.1cmH20へ25%上昇した。コンプライアンスは,3.3±0.3から2.5±0.2ml・cmH20^<-1>へ26%低下した。交感神経活動は56%増加し,迷走神経活動は変化しなかった。硬膜外麻酔で,最大気道内圧,コンプライアンスとも変化しなかった。血圧は85±10.0mmHgへ低下し,交感神経活動はベースラインから60%減少した。迷走神経活動はほとんど変化がなかった。カプサイシン投与で気道内圧は10.4±0.5から12.4±0.58cmH20へ20%上昇した。コンプライアンスは,4.1±0.5から3.2±0.4ml・cmH20^<-1>へ22%低下した。交感神経活動は48%増加し,迷走神経活動はわずかに減少しただけであった。硬膜外麻酔で,最大気道内圧とコンプライアンスは変化しなかった。交感神経活動はベースラインから56%減少した。迷走神経活動は39%減少した。 硬膜外麻酔は,メタコリンおよびカプサイシンによって引き起こされた気道収縮に影響を及ぼさなかった。
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