研究概要 |
市販のブピバカインは、鏡像異性体Rectus(right)とSinister(left or levo)の混合物(ラセミ体)である。本研究課題は、R-ブピバカインとS-ブピバカインの効果と毒性を比較することを目的とした。 1.R-ブピバカインとS-ブピバカインのそれぞれを入手するため、イギリスChiroscience社と交渉を繰り返し、平成9年3月1日に秘密保持契約を結び、それぞれの薬物を入手した。 2.アメリカザリガニ腹部神経索の細胞内ブピバカイン濃度を測定するため、ガラス微小電極を作製した。絶縁性のガラス管を引き伸ばしてマイクロピペットを作り、表面をシリコン化し、ピペット先端を鋭利に研磨して神経細胞に刺しやすくした。ピペット内に少量のイオン交換剤、細胞内類似溶液などを充填した。これらの電極と各種濃度のブピバカイン溶液を用いて校正曲線を作成した。感度、安定度を測定しながら改善を繰り返し、ほぼ満足できる細胞内ブピバカイン濃度測定用微小電極を作ることができた。次年度は、この微小電極を用いて、同濃度のR-またはS-ブピバカインを神経細胞外へ投与したとき、細胞内濃度に違いが生じるかどうかを検討する予定である。 3.アメリカザリガニの腹部神経索を取り出し、desheathしたあとチャンバーに固定し、ザリガニ用リンゲル液で潅流した。マイクロマニピュレータを用いて膜電位測定用の微小電極を軸索に刺し、0.2Hz,0.2msec,閾値の1.5倍の強さで刺激を与えながら活動電位を測定した。ラセミ体ブピバカインの効果を、活動電位の微分値の抑制の程度をもって評価した。次年度は、R-ブピバカインとS-ブピバカインで抑制の速度ならびに程度に違いがあるかどうかを比較する予定である。
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