研究概要 |
平成10年度には、2クロロナデノシン(アデノシンAl受容体アゴニスト)のグルタミン酸放出抑制作用が、脊髄虚血ストレス下でも存在するか否かを確認する実験を行った 【方法】 くも膜下腔へのカテーテル挿入:ハロセン麻酔下にラットの大槽を切開し、くも膜下腔内に薬物投与用のカテーテルとマイクロダイアリーシス用ループカテーテルを挿入する。術後5日目に以下の実験を行った. 春髄虚血の導入:ロセン麻酔下に左大腿動脈より胸部下行大動脈(DAO)に挿入した2F.Fogartyカテーテルの先端バルーンを膨らませることによりDAOを遮断し、さらに左内 頚動脈からの脱血による低血圧を併用することで脊髄虚血を作成した.圧は40mmHgに設定し、10分間とする。2クロロアデノシン30μg、または生理食塩水10μlを虚血導入5分前にくも膜下投与する。脊髄虚血後麻酔より覚醒させ、監察用ケージに収容する。ShamOperation群では、上記と同じ手術を行ったがFogartyカテーテルの先端バルーンを膨らませず、また脱血も行わなかった. マイクロダイアリーシスによるグルタミン酸の測定:マイクロダイアリーシス用カテーテルから人工髄液を灌流し(10μl/min)、虚血前、虚血中、および虚血後3時間、10分間毎に採取した回収液中に含まれるグルタミン酸を高速液体クロマトグラフィーで測定した. 【結果】 2クロロアデノシンはシャム手術群では脳脊髄液中のグルタミン酸を著明に減少させたが,脊髄虚血後のラットではグルタミン酸濃度を減少させなかった.この結果から,1)虚血ストレスによる脳脊髄液中グルタミン酸濃度の上昇が2クロロアデノシンによるグルタミン酸濃度の低下をはるかに凌駕するためである可能性と2)虚血ストレスによってアデノシンAl受容体のアゴニストに対する親和性が低下している可能性が示唆される.
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