研究概要 |
ラット大動脈を吸入麻酔下に摘出し,螺旋状標本(幅約1mm,長さ約7mm)を作成した.血管内皮細胞は除去した.この標本に細胞内カルシウム濃度測定のためにfura-2を負荷し,等尺性収縮と細胞内カルシウム濃度を同時に測定した.まずノルエピネフリンで収縮させておいた標本を10^<-8>〜10^<-7>Mのイソプロテレノールで拡張させた.同様の実験を吸入麻酔薬ハロタン,イソフルラン投与下で行い,吸入麻酔薬の影響を調べた.次いでノルエピネフリンで収縮させておいた標本を10^<-7>〜10^<-6>Mのフォルスコリン,10^<-4>〜10^<-3>Mのdibutylyl cyclic AMPで拡張させた.同様の実験を吸入麻酔薬投与下でも行い,吸入麻酔薬の影響を調べた.10^<-8>〜10^<-7>Mのイソプロテレノール,10^<-7>〜10^<-6>Mのフォルスコリン,10^<-4>〜10^<-3>Mのdibutylyl cyclic AMPは、ノルエピネフリンで収縮させた血管標本を濃度依存性に拡張させた.。2%および3%ハロタン,2%イソフルランは,イソプロテレノールによる拡張作用を有意に抑制した(P<0.05).これに対しハロタンおよびイソフルランは,低濃度のフォルスコリン(10^<-7>M)やdibutylyl cyclic AMP(10^<-4>M)による拡張作用を逆に亢進した(P<0.05).以上のことより,交感神経β受容体を介する血管拡張作用に対するハロタン,イソフルランの作用部位は,アゴニストと受容体の結合からアデニレートシクラーゼの活性化までのいずれかの部位であることが推察された.
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