研究概要 |
吸入麻酔薬ハロタン,イソフルランが,血管平滑筋の交感神経β受容体を介する拡張反応を抑制することが以前の我々の研究より明らかとなった.今回はこの抑制がどのレベルで起こっているかをさらに詳しく検討した.まず細胞膜におけるβアゴニストと受容体の結合に,吸入麻酔薬がどのように影響しているかを調べた.麻酔下にラット大動脈を摘出し,Shaulらの方法に従って膜標本を作製した.β受容体との結合試験には[^<125>I]-iodocyano-pindololを用い,3%ハロタン,4%イソフルランの存在下,もしくは非存在下でβ受容体との結合試験を行った.その結果,いずれの麻酔薬も[^<125>I]-iodocyanopindololとβ受容体の結合を抑制しないことが明らかとなった.次いで,両麻酔薬がβ受容体刺激による細胞内cyclic AMP生成にどのような影響を及ぼすかについても検討した.10^<-7>Mノルエピネフリン存在下に,摘出ラット大動脈を10^<-7>Mイソプロテレノールまたは10^<-6.5>Mフォルスコリンで刺激し,細胞内cyclic AMP濃度を測定した.同様の実験を3%ハロタンもしくは4%イソフルランの存在下でも行った.その結果,両麻酔薬はイソプロテレノールによる細胞内cyclic AMP濃度の上昇を抑制するが,フォルスコリンによる細胞内cyclic AMP濃度の上昇は抑制しないことが明らかとなった.今回の実験より,吸入麻酔薬ハロタン,イソフルランがβ受容体を介する反応を抑制する部位は,受容体からG蛋白,さらにその情報がアデニレートシクラーゼへと伝えられるいずれかの部位であると結論された.
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