研究概要 |
本研究はbasally released EDRF惹起性血管弛緩機構に関与するPLA2とその酵素活性を調節するG蛋白およびアラキドン酸代謝に注目し、(1)これらが関与するカルシウム-カルモジュリン非依存性NO合成酵素の活性化に至までの内皮細胞内のシグナル伝達機構を明らかにすること、(2)揮発性麻酔薬のbasally released EDRFの弛緩機構に対する影響を検討しその作用点を明らかにすることをを目的として行なった。ハロタン、イソフルラン、セボフルランそれぞれのPLA2直接刺激によって惹起された内皮依存性のNO-cGMP系の弛緩反応における影響を直接観察した結果、ハロタンのみに抑制効果を有していた。また、ALF, vanadateによる刺激でG蛋白を介して間接的にPLA2刺激を行なって得られた弛緩反応に対して、ハロタンは抑制効果を示さなかった。この知見から予想される結果は、カルシウム-カルモジュリン依存性NO合成酵素由来の弛緩反応に対して抑制効果があると報告されている上記3種の麻酔薬の中でハロタンは特異な作用機序を持つということと、イソフラン、セボフルランはハロタンと異なり血管のbasal tonusを増加させない可能性が高いという点、及びハロタンの抑制効果は以降のシグナル伝達機構にあるということが示唆された。平成9年度はこれらの弛緩反応への影響をcGMPの測定のもとに検証したが、弛緩反応観察によって得られた上記平成8年度の知見を補助する結果が得られた。
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