ウナギ心室より抽出されたナトリウム利尿ペプチド(eel ventricular natriuretic peptide:eVNP)の犬腎に対する作用は、ヒト利尿ペプチド(human a-type natriuretic peptide、human b-typenatriuretic peptide:hANP、hBNP)と差を認めないことを報告した。 また、血圧を低下させない少量(2-8ng/kg/min)のペプチドを麻酔犬に静注した場合、eVNPとhANPは心機能に有意な変化を来さないが、hBNP静注群では心拍出量並びに左室仕事量が有意に減少したのに対し、hBNP群では全末梢血管抵抗が有意に上昇した。以上の結果より、hBNPにはnegative inotropic actionがあり、eVNPの心機能に対する作用と異なる結果が得られた。こ理由は、ペプチドの末梢血管への作用の差ではなく、心筋への直接作用に起因することを示唆している。 今回、さらに少量のペプチドを冠状動脈に注入したが、腎と同様にeVNPとhBNPの間に差を認めた。しかし、利尿ペプチドのセカンドメッセンジャーであるcGMPの発現には有意な差を見つけることができなかった。今回の成績はeVNPは明らかにBNPとは異なる循環作用を持ち、eVNPは心室で作られる新たなペプチドであることを示唆しているが、それぞれの受容体解析が次のステップとして必要であり、現在その研究を進めている。 なお、eVNPの研究を応用してオピオイドペプチド(エンケファリン)のDNA発現ベクターを作成し、そのin vivoへの遺伝子導入法を確立した。この系を応用してヒトの非内分泌細胞にオピオイドペプチドを産生させて疼痛治療に役立てる研究にも着手し、成果をあげている。
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