研究概要 |
麻酔薬は神経系の機能を可逆的に抑制してその麻酔効果を表わしていると考えられているが、現在、中枢神経系の麻酔薬の作用部位としてシナプスへの作用が注目され、特にシナプス間隙におけるニューロトランスミッターの動態に大きな影響を及ぼしていると考えられている。今回は、シナプス間隙においてCAの再吸収に関与するアミントランスポーターに焦点をあて、ケタミン、プロポフォールのそれらに対する作用を副腎髄質細胞をもちいて検討した。その結果は、1、ケタミンは^3H-NAの細胞内の取り込みを臨床濃度において抑制した。プロポフォールも^3H-NAの細胞内へ取り込みを臨床濃度において抑制した。2、ケタミンは副腎髄質細胞の細胞膜に対する^3H-デシプラミン結合を最大結合Bmaxを変えず結合定数Kdを変化させて阻害した。3、ケタミンは、カルバコール刺激によるCA分泌を抑制したが、^3H-NAの取り込みを抑制した濃度より高い濃度であった。以上の結果より、神経シナプスの間隙でのニューロトランスミッター動態に麻酔薬が重大な影響を及ぼしている事が明らかとなってきた。さらに、麻酔薬による細胞内蛋白質燐酸化反応やプロテインキナーゼ系に及ぼす影響についても報告した(Jimi et al,1997)。また麻酔薬だけでなく外科手術に使用されるプロタミンも交感神経のニューロトランスミッターの動態に影響を及ぼすことを示唆する結果を得ている(Minami et al.,1996).。さらに、抗精神薬のカルママゼピン(Yoshimura et al.,1995)やカルモジュリンキナーゼII阻害薬についてもシナプス間隙におけるニューロトランスミッターの動態に大きな影響を及ぼしている結果も得ている(Tsutsui et al.,1996)。今後は、マウスを用いて全身麻酔薬の中枢および末梢の交感神経のシナプス間隙におけるCA動態に対して総合的な解析を行い、全身麻酔薬がニューロトランスミッターの動態にどの様に影響するのか検討したい。
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