研究概要 |
・腎癌細胞6株(ACHN,NT-2,OS-RC-2,SMKT-R-2,SMKT-R3,SMKT-R-4)を用い、これをras癌遺伝子の抑制変異体N116Yを遺伝子導入することで腎癌細胞株の増殖抑制がおこるがどうか検討した。 ・N116Yの発現ベクターとして、小木曽らにより作成されたpZIP-N116Yを用いた。また、コントロール ベクターとして、pSV2neoとpZIPneoSV(X)を用いた。 ・pZIPneoSV(X)が導入された細胞株とくらべ、pZIP-N116Yが導入されたACHN,NT-2,SM-KT-R3ではコロニー形成がほぼ完全に阻害された。 ・pZIP-N116Yの増殖抑制効果がne omycin耐性遺伝子の抑制によるものでないことを確認するため、pZIP-N116YとpSV2neoを10:1の割合で導入した結果、コロニー形成は、コントロールにくらべ、ACHNで4%,NT-2で7%,OS-RC-2で10%,SMKT-R2で13%,SMKT-R3で20%,SMKT-R4で9%と著明に抑制され、N116Yが腎癌細胞株の増殖抑制効果を持つことが確認された。 ・N116Yによる増殖抑制のメカニズムを解明するために、ras癌遺伝子の活性化機構であるGTP/GDPexchange-reactionにかかわる蛋白質Son of Sevenless(Sos)蛋白質の発現についてWestern Blot法を用い検討した。 ・5つの腎癌細胞株(ACHIN,NT-2,OS-RC-2,SMKT-R-2,SMKT-R-3)全てで、正常腎組織と比べ、Sos蛋白質の発現増強を認め、腎癌の増殖にras癌遺伝子の活性化機構であるGTP/GDP exchange reactionが重要な役割を果たしている可能性が示されたと同時に、H-rasの抑制変異体N116Yの腎癌細胞に対する増殖抑制効果は、この反応の抑制によりもたらされた可能性が考えられた。
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