研究概要 |
癌が転移した場合あるいは転移がなくても被膜を越えたりリンパ管侵襲を認めた場合,血中を癌細胞が循環する事が予測される。サイトケラチンは上皮性細胞のマーカーであり血液細胞などの間葉系細胞にはほとんど発現しない。サイトケラチンには20個のアイソタイプがあり,ケラチン8,19,20は単クローン性抗体により上皮性細胞のみに発現されていることがわかっている。 サイトケラチン19mRNAの発現をヒトの癌細胞株である前立腺癌LNCaP,DU145,PC-3,膀胱癌YST-1,KK47,腎細胞癌TOS-1,ACHN,R4,精巣腫瘍NEC8,NEC14で調べたところすべての癌細胞でサイトケラチン19mRNAが発現していたが発現の程度は様々であった。特にヒト腎細胞癌TOS-1で強く発現し,正常ヒト末梢血の単核球10^6個にTOS-1細胞を段階的に希釈する系列で検討した結果TOS-1細胞1個まで検出できることがわかった。 臨床例での検討ではサイトケラチン19mRNAが尿路性器癌患者の血中に認められ、膀胱癌では10例中3例が陽性で,2例は転移有り1例は転移のない局所浸潤性癌であった。腎盂尿管癌では6例中1例が陽性で肝,骨,リンパ節転移を認めたが1コースの化学療法後血中サイトケラチンmRNAは検出できなくなった。前立腺癌では7例中3例が陽性でいずれも骨転移を認めた。腎癌,精巣腫瘍,陰茎癌ではそれぞれ6例中3例、8例中1例,2例中2例が陽性で、陰茎癌の1例が転移を認めない例であった。一方、健常人9人ではいずれも血中にサイトケラチン19mRNAは検出されなかった。血中サイトケラチン19mRNAの検出により微小転移など潜在的な進行癌の検出にも役立つ可能性がある。
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